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笑い

ともこさんは、学校に行くことができずに私の外来に来ました。

外来では、「死にたい。」と言って、泣きました。ずっと泣きました。

私は、ともこさんに、マジックを披露しました。

ともこさんは、驚いた顔をしましたが、少し笑ってくれました。


私は、 

「何にもしてあげられないけど、一緒に笑うことはできるかな。」

と話しました。


それから、ともこさんは、マジックをやりに外来に来てくれました。

外来の度に、ともこさんは、学校の怖い夢を見ること、眠れないこと、自分なんて生きている意味がない。などと訴えてきました。


私は、家族以外の人とつながりを作るために、ともこさんに訪問リハビリを提案しました。

乗り気ではなかったけど、ともこさんは同意してくれました。

訪問リハビリに徐々に慣れてきたともこさんは、不登校の子のための教室に行くようになりました。


何もやることがないと言っていたともこさんは、吉本のお笑いのyoutubeをみたり、ダンスをするようになりました。


「でも、落ち込むんです。そんなときは、どうしたらいいんですか?」

と聞いてきたともこさんに、

「落ち込むようになったんだね。落ち込むってことは、いい状態があるってことだね。

今までは、落ち込むこともできなかったもんね。」

というと、ともこさんは、はっとした顔をしました。

「ともこさんは、今まで自分の線がなかったけど、自分の線が見えてきたね。」

ともこさんは、軽くうなずきました。


次の外来で、ともこさんは、オーディションに申し込んだことを教えてくれました。

そして、

「最近、落ち込まなくなったんです。」

と教えてくれました。


高校は、自分で選び、第一希望の高校に受かりました。

ともこさんは、合格したことを笑顔で報告してくれました。


悲しくて、苦しくて、つらくて、やりきれない、

そんな心を癒してくれるのは、“笑い”なんでしょうね。



(“輪”を“和”でつなぐ、クリエイツかもがわ一部改変)




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