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独りではないという安心を届けたい ~八王子市における不登校児をめぐる教育環境の現状とチームとなって児童・生徒とその保護者を支える体制の構築の重要性~

執筆者:中村八重(主任児童委員・民生委員)


なかなか一般の方々には耳慣れない主任児童委員という役に就き、0歳から18歳までのお子さんとその保護者の方々に様々な悩みや課題が持ち上がった時、学校や行政、時には病院や専門家などにおつなぎし、課題に取り組むためのお手伝いをしています。

民生児童委員との兼務となりますが、民生児童委員の皆様が子どものことから年配の方まで幅広く寄り添う中で、より子どものことに特化した活動を進めているのが主任児童委員です。


 活動の中で様々なお話をお聞きします。そして最近、虐待や特別支援に関することに次いで多くなってきた内容が、学校に足が向かなくなったお子さんと保護者の方の悩みに関するお話です。

不登校という言葉でひとくくりにするにはそのきっかけは様々で、もちろん家庭が置かれている環境も学校、周囲の環境も千差万別。まずはお気持ちを受け止めることに徹する日々ではありますが、ある出会いをきっかけに、フリースクールの運営をされる方々と行政側をつなぎ、対話の場を持つ機会を得ました。


 現在フリースクールへ通うご家庭から月謝として収めていただく費用だけでは、運営を継続するための最低限の維持費をねん出することさえもままならないことが現状です。

その子その子のケースバイケースなフレキシブルな登校の事情にできるだけ合わせられるよう、フリースクール側もその料金体系は1日チケットや月謝制、など配慮されています。   環境の継続を考えたとき、フリースクール施設そのものへの助成がされることも期待したいところですが、その費用負担の大きさを考えると、フリースクールへの通所を選択したお子さん自身が助成を受けられないものかと思います。現在八王子市内のフリースクールへの通所は私立の学校を選択し、通わせていらっしゃるご家庭の選択と同じ扱いとなるため特別な助成は受けられていません。ただこの6月から、東京都からの調査協力金が月に1万円受給できることとなり、学校からの働きかけにより各ご家庭が申請を進められています。


八王子市が2020年に策定した教育振興基本計画には、一人一人のニーズに合った教育が求められ、学校以外の居場所を各々探してよいと定義されています。そんな中、今現在の八王子市では、フリースクールへの登校が出席日数として認定されるか否かは各学校長の判断とされています。

必要な書類の提出、必須項目とされる履修内容など、その判断の基準が規定されることが望まれており、東京都からも判断基準の提示はされてはおりますものの、教育委員会関係者からはかえって一律であることの危険性を危ぶむ説明も聞くことができました。子どもごとに不登校となった理由は様々であることを考慮し、現在その子が置かれている家庭や登校する施設の環境などを学校管理職が把握し、施設関係者との対話を重ねる努力が、マニュアル化され流れ作業となることで損なわれることを危ぶんでいるとも聞かれました。

私が関わる学校の管理職の方々は、フリースクール関係者とのやり取りを重ねる努力を惜しまない方が多いように感じます。しかしながらフリースクールの教育環境では定められた履修課程を修められないという理由で登校とは認められないケースや、反対にクラブ活動の人間関係や活動が学校へ足を向けるきっかけとなることを願って、登校として認められるケースなど学校ごとの対応の違いに疑問を感じる声も聞こえてきます。


以前からよく耳にする保健室登校。教室に足が向かないのならば保健室は?と言われることも多いようですが、保健室は思いのほか人の出入りが多く、音の問題など教室に長くいることが苦しいお子さんなどからすると教室の環境と大差ありません。そしてこのコロナで、第2保健室の設置が義務付けられるなど学校は保健室の運用にも変化が求められています。

静かな落ち着いた環境で、心を落ち着かせ、エネルギーを貯め、その子その子のタイミングで教室に足を踏み入れることを可能にしていくためには、教室でないスペースの確保が大切になってきます。校内フリースクールという形で設置に向けて動くPTA関係者の方々と

お話しする機会もありますが、空き教室の問題、配置する人員の確保(専門的な知識を持った大人が従事することが望ましい)など課題も多く、早期に関係者の努力が実を結ぶことを願ってやみません。


不登校という現実に直面した時、保護者の方々はこれまでのご自身の子育てを振り返り、

ご自身を責めてしまったり、周りからの接触を遠ざけよう、現状を隠そうとされる方もいらっしゃいます。

甘やかしている、怠けているなど心無い言葉が身近な人間から時には身内からでさえ向けられ理解が得られない日常は「わかるよ」という言葉を簡単に使ってはいけないと感じます。

臨床心理士、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、担任の先生、管理職の方など、わが子を取り巻く関係者とお話をして事情を共有する扇の要の役割をするのは多くがお母様であり、現状を話すことで気持ちが晴れ整理できる面もあるとは思いますが、多くの関係者が一堂に集い考えを出し合いサポート方法を考えるチームの構築が、いわゆる不登校に関する課題ではなかなかできていません。

八王子市では必ずスクールカウンセラーが週一回以上巡回してくれます。しかしケースごとの要の役割を担うことは難しく、大変な日常に疲れ、思い悩み、ついつい悩む本人であるわが子に向け厳しい言葉を投げてしまう。そしてそのことでさらに自分を責める保護者の方に寄り添うとはどういうことなのか、日々考えます。


ここは改めて学校に出ていくためのエネルギーを貯める場所なのです。と話されるフリースクールの先生の言葉がいつも思いだされます。逆を言えば現在の教室はかなりの割合の子どもたちにとってそれだけ大きなエネルギーを必要とする環境であるということでもあるのです。


子どもたちばかりでなく先生や保護者も、あなたがあなたのままで、自分の道と居場所を探していくことができ、お互いを認め合う環境をどうしたら作っていけるのか?

その立場に立った時、自分ならどうするだろう、どうしてもらいたいだろうと考えてみようとしてくださる方々が各地に増えていくことを願っています。


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中村 八重


八王子市内小学校のPTA会長を務めたのち、地域の主任児童委員・民生委員の役に就く
学校運営協議会会長、学校コーディネーター、住民協議会副会長として関係所管、学校、行政と0歳から18歳までのお子さんとその保護者をつなぐ活動を継続中。
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